「想い」を伝える仕事。

少し前の話ですが、私の好きな蕎麦屋の経営者さんが、体調を崩されて入院しました。
もともとは地方のスーパーマーケットを経営なさっていた方ですが、
息子さんに経営を譲り、ひっそりと小さな蕎麦屋さんを始めました。

定年になって蕎麦打ちを始める方は多いので、この辺りまでは、よくある話なのですが、
この蕎麦が凄いんです!


蕎麦もうどんも打ち立て♪ぴかぴかです。

カウンターだけの小さな店で、
オーダーが入ってから蕎麦粉を量って、打って、茹でます。
立ち食い蕎麦並みのスピード感です。
道具にも器にもこだわってないし、ものすごく簡単そうに作るのに
悔しいぐらいおいしいんです。
訊くといろいろ教えてくださるし、粉も売ってくれるけれど、
お店で食べた方がおいしいので、私も、近くに行くたびに通ってました。

入院を機に、もうお店を閉めようと経営者さんは思ってたそうです。
ところが、その蕎麦屋さんの熱心なファンが毎日、お見舞いに来られて、
「お店を閉めないで欲しい。」
と訴え続け、そんなに言ってくれるならと、
ゆるゆると週に3日だけ開けることにしたそうです。

飲食店を経営するって、お金を儲けたいとか、
おいしいものを食べて欲しいとか、
いろいろな思惑があると思いますが、
この店には、そんな次元を通り越した「想い」があると思います。
それは、お客さん側にも。店主側にも。

最近のメニュー開発の場面では、
モンスターみたいなクレームを言う人を意識しすぎて、
粗相がないようにと思い切った料理やサービスに踏み切れないケースが多いです。
そこには相手のことを思い遣る「想い」はありません。

その場しのぎの何かではなく、
「想い」を伝えるお仕事をしなければと、改めて襟を正す思いになりました。

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