両口屋是清さんの上生菓子。

和菓子屋さんが一年で一番忙しい季節って、いつだと思いますか?
それは、年末。
年末年始の手土産や、お正月に食べるお茶菓子を買い求めに
年末、特に12月30日に集中するそうです。

そんな多忙な時期に、名古屋の老舗「両口屋是清」八事店さんにお邪魔しました。

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東京で暮らす私にとって、両口屋是清さんのお菓子は、
東海圏のおみやげでいただく「二人静」や「旅まくら」などの焼き菓子が馴染み深いです。
お邪魔した八事店では、焼き菓子以外に上生菓子の製造販売をなさっています。
おいしいお茶とともに美しい上生菓子を頂戴しました。
今年は干支が猿なので、おめでたい舞とされる能の「三番叟」を題材にした上生菓子だそうです。

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さっそく、和菓子の実演をしている厨房に入らせていただきました。
職人さんがひとつひとつ手作りなさってます。
まずは先ほどいただいた烏帽子の生菓子の「かるかん」部分を
ヘラで切って、蒸し器に入れる工程です。
伊勢芋っていうアクが少ない真っ白なヤマイモを使っていらっしゃるそうです。

蒸しあがったら、焼きごて。
簡単に見えますが、均等な色ですべて同じように跡をつけるのは
熟練の技だそうです。

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あんを丸めたものを包む工程も、さりげなくちぎって丸めていらっしゃいましたが、
秤を使って計量しなくても、手の感触でほぼ同じ重量になるそうです。

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切り昆布を刺して、型で抜いた赤い丸を載せたらできあがりです。

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「きんとん」も、作っていただきました。
目の粗い篩(ふるい)で生地を漉します。
力の入れぐらいによって、太さや長さが変わってしまうんですって。
この「きんとん」は、松の上に雪がある風景を見たてているそうです。
冬でも青々としている松の生命力に積もる雪は季節感以外に力強さを感じます。

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続いて、雪のかかった梅の「こなし」。
「こなし」とは、白あんを主原料にして蒸した和菓子の生地のことです。
濡らした木型に、ちぎった生地を入れてぎゅっと上から押します。
先に雪に見立てた部分をちょっとだけ入れて、梅の部分の生地を載せます。

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一見簡単そうだけど、少なすぎると形がきっちりでないし、多すぎると型からはみ出しちゃう。
職人さんの勘で、さりげなくちぎった生地がぴったりの分量です。すごい!

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完成!美しいですね。

『ケーキは重ねる文化だけど、和菓子は包む文化なんです。』
って、おっしゃられていたのが印象的でした。
包み込む心って、日本人の心の原点な気がします。

最後にひとつだけ売り場で気になったお菓子のひとつをご紹介します。
宮中の歌会初めをテーマにして、各和菓子メーカーさんが
毎年この季節に『御題菓』を作られるそうです。
今年のテーマは『人』。
両口屋是清さんでは、十二単の裾広がりと
人という文字に見立てて華やかなお菓子を作られていました。
難しいテーマですが、さすがです。

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昔は棹菓子と呼ばれる、包丁で切る羊羹などがお遣いものの主流でしたが
お客様から「うちは包丁がないので長い羊羹はねぇ…」と言われたことがきっかけで、
棹菓子を一口サイズにしたお菓子が開発されたそうです。
今では羊羹だけではなく、小豆に米粉を混ぜて蒸した「村雨」製等、
棹菓子を一口サイズにしたお菓子のバリエーションが増えたそうです。

また、茶人の方から、「クリスマスの上生菓子を作っていただける?」
という要望で、クリスマスがテーマの生菓子も始めたそうで、
お客様の要望と時代に合わせて、伝統を守りつつ、両口屋是清さんらしいお菓子を
作るように心がけていらっしゃるそうです。
勉強になりました。ありがとうございます。

両口屋是清 八事店
名古屋市天白区八事天道302
営業時間     9:00~19:00

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